東京地方裁判所 昭和57年(ワ)3348号 判決
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【説明】
「2 責任原因
(一) 被告平瀬は、信号機の設置された本件交差点を通過するに際し、信号機の表示が赤色で「止れ」を表示していたのであるから、直ちに停止すべきであつたのに、これを無視し、左右の安行を確認することなく交差点に進入した過失により、信号に従い通過中の前記訴外人の運転する車両に衝突したものであり、民法七〇九条の不法行為責任がある。
(二) 右加害車は訴外島鉄運輸株式会社の所有するものであり、被告平瀬は、右会社の被用者として、物品運搬という右会社の業務遂行のため加害車を運転中、本件事故を起こした。
被告松尾は、右訴外会社の代表取締役であり、同会社に常勤し業務全般につき指揮監督し業務遂行の中心になつていたものであるから、民法七一五条二項の代理監督者責任がある。」
【判旨】
二同2(一)の事実(被告平瀬の責任原因)については、被告平瀬に赤信号を見落した過失があり、同被告が民法七〇九条の不法行為責任を負担することは、同被告の認めるところである。
三被告松尾の責任について判断する。
請求原因2(二)前段の事実及び被告松尾が訴外島鉄運輸株式会社の代表取締役であつたことは、当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、訴外島鉄運輸株式会社は長崎県島原市に本社を置き、貨物自動車運送事業等を営む資本金六、〇〇〇万円の会社であり、その組織は別紙指揮命令系統図記載のとおりであつて、社長は株主総会並びに取締役会の決議を実行し、内外の社務を統轄し、部長は社長及び常務取締役の命を受け、部全般の業務を掌理し、課長は部長の命を受け課員を指揮監督し所管の業務を掌理し、所長は課長の指揮を受け営業所を統轄する、とされていたこと、被告平瀬は昭和五六年四月から同会社長崎営業所に雇用され、遠距離の大型トラックの運転手として稼働していたこと、当時の同会社長崎営業所の人員は一七名位であり、所長の訴外中島一弘が営業所の事務を統轄していたこと、代表取締役の被告松尾は車両の運行管理等いわゆる現業の仕事には関与していなかつたこと、以上の事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。
右事実によれば、被告松尾が右訴外会社の代表者として一般的業務執行権限を有していたにしても、現実に被告平瀬を監督する地位にあつたと解することは困難であり、他にこれを認めるに足りる証拠はないから、被告松尾に民法七一五条二項の代理監督者責任を認めることはできないといわなければならない。 (武田聿弘)